2012年8月13日月曜日
「多職種連携」に思う
栄養サポートチーム(NST)は今日全国の病院に広く普及しています。高カロリー輸液の登場により、1970年代初頭に米国で始まったNST活動は、かつては日本ではごく一部の病院でしか行われていませんでしたが、2000年以降、有効性、安全性、経済性などからその重要性が認識されるようになり、やがて多くの施設で取り組まれるようになりました。低栄養患者の栄養管理を多職種が寄り集まって、院内を横断的に活動するというNST活動は、それまでセクショナリズム色の強かった医療現場に風穴を開ける新しい診療機能となりました。
これまで医師は他職種から介入されることを好まず、各職種もそれぞれが専門性、独立性を重んじてきたように思います。NSTはその殻を一気に破り、医師、看護師とともに管理栄養士、薬剤師、リハビリ・スタッフ、検査技師らコメディカルの人達が病棟に上がり、手をつなぎ、生きいきとして低栄養の改善に取り組み、着実に成果を挙げてきました。この多職種連携による栄養管理のチーム医療は日本静脈経腸栄養学会がNST設立の後押しをし、2005年には医療保険の栄養管理実施加算で制度として認められ、日本病院機能評価機構のVer5(2005年)の評価項目としても取り上げられることとなりました。今日、褥瘡対策チーム、感染対策チーム、緩和ケアチーム、摂食嚥下チームなど各種の医療チームがよく見受けられるようになりましたが、NSTはそのはしりだったように思います。チーム医療といっても、かつては医師中心型の古典的な診療形態にとどまっていましたが、ここ10年位前より多職種が連携することの大切さに臨床現場は目覚め、様々な場面でそれが根付いてきたのではないでしょうか。厚労省で進められているチーム医療の推進に関する検討会報告書には、「チーム医療とは『医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること』と一般的には理解されている」と書かれています。
今後、益々ニーズの高くなる在宅医療ですが、入院患者に向けられたチーム医療と同様に各職種同士、あるいは他職種間の協働による多職種の「手をつなぐ」取り組みは、在宅の患者さんへの大きな支えとなるでしょう。
社会福祉法人日本医療伝道会病院長鈴木博
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